高柳昌行は70年代、ニュー・ディレクション・ユニットなどのフリージャズ演奏と並行して、リー・コニッツやレニー・トリスターノなどを手本にしたクール・ジャズが基調の数々のスタンダード4ビートジャズ、そしてブルース、サンバ、ボサノバなどの演奏を、自らの“セカンド・コンセプト”と位置づけて繰り広げているが、本作に収めた演奏もそうした活動の中の一幕である(ちなみにグループとしてのセカンド・コンセプトのベースは本来井野信義だが、井野が多忙な時期のリハーサルに本作でベースを弾いている森泰人がしばしば参加していたとのこと)。
本作に収められた曲は、『タイム オン マイ ハンド』はビリー・ホリデイの名唱でも知られ、『ユービー ソー ナイス トゥ カム ホーム トゥ』は日本ではヘレン・メリルの歌唱でつとに知られるコール・ポーターの名曲、『サブコンシャル リー』もリー・コニッツのデビュー作(1950年)に当たる楽曲と、いずれも“古き佳き時代”に作られ演奏されてきたものだが、高柳のギターのずっしりとした音色と力強いピッキング、そして当時のジャズの空気を偲ばせるリズムによって、新しい命を吹き込まれている。
このグループは、弘勢憲二のピアノと森泰人のベースと山崎泰弘のドラムでスタンダードの曲を演り、その上でバリバリとアドリブを弾きまくりたい、という高柳の発想で結成されたとのことだが、高柳のギターを支える他のメンバーの演奏も含め、70年代から80年代に差し掛かる時代の“日本のジャズの最高峰”の一例を、ぜひ味わっていただきたい。
<曲目>
- カム フォール 11:02
- タイム オン マイ ハンド 11:39
- ユービー ソー ナイス トゥ カム ホーム トゥ 11:17
- サブコンシャル リー 10:30
高柳昌行 Mayuki Takayanagi (G)
弘勢憲二 Kenji Hirose (El.P)
森泰人 Yasuhito Mori (B)
山崎泰弘 Yasuhiro Yamazaki (Ds)
1979年6月24日/新宿・ジャズクラブタロー(昼の部)にて録音
録音機材:モノラルラジカセ
プロデュース:JINYA DISC
マスタリング:コジマ録音
デザイン:佐々木暁
解説:森泰人
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